国際科学技術財団は21日、優れた科学技術の成果を称える2026年の日本国際賞に、米ハーバード大学のシンシア・ドワーク教授(67)ら3人を選出した。ドワーク氏は「エレクトロニクス・情報・通信」分野で受賞。暗号資産などデジタル社会の信頼性を支える理論的枠組みの構築が評価された。

受賞理由には、暗号資産の基盤技術となった仕組みの提案や、個人情報保護理論の定式化が含まれる。生命科学分野では大阪大学の審良静男特任教授(72)、米テキサス大学のジージャン・チェン教授(60)が受賞した。受賞式は東京都内で4月に行われる予定。

暗号資産の信頼性を支えた先駆的な研究

ドワーク教授は、1992年に電子メールのスパム対策として計算コストを課す概念を提案した。このアイデアは後に「Proof of Work(PoW)」として暗号資産の基盤技術となり、分散型台帳における取引の正当性を担保する仕組みとして普及した。1990年代以降のインターネット社会の進展を見据え、信用のない環境で信頼性を成立させる理論的な基盤を早くから提示したことが高く評価されている。

PoWはビットコインなど多くの暗号資産プロトコルで採用され、各ノード間の合意形成や改ざん耐性の確保に寄与している。

差分プライバシーとデジタル社会の倫理的課題

2006年に定式化された「差分プライバシー」は、ビッグデータ解析と個人情報保護の両立を数学的に定義した理論である。この理論では、統計結果が特定個人のデータの有無によってほとんど変わらないことを保証し、個人情報の漏洩リスクを定量化する枠組みを提供する。

この数理モデルは、データ活用の有用性とプライバシー保護のトレードオフを客観的に扱う上で重要であり、マイクロソフトやグーグル、NTTドコモなど世界のIT企業や政府統計などで応用されている。また教授は、人工知能(AI)の公平性や倫理的な偏りに関する研究も進め、デジタル社会が直面する倫理的課題への数理的対応に取り組んでいる。こうした業績が評価され、日本国際賞の受賞に至った。